ワンちゃんを飼っていらっしゃる方なら、一度は「ウチの子も交配させてみようかしら?!」と考えた事があるのではないでしょうか? 私も過去に一度、考えた事はありますよ。ひなではなく、我が家の3代目のG・レトリバーのアンディーです。結局、交配はしませんでした。私がなぜアンディーの交配をしなかったのか。最大の理由は、その時既に獣医師であった私が、彼女のある行動に疑問を持ち検査をした結果、健康上問題があると推測できる結果が出た為です。また、それはおそらく先天的なものだろうと推測できたので、子犬たちにそれが遺伝すること危惧したからです。そして、おそらくアンディーは長く生きる事ができないと判断したからです。出産による多大な負担で短い犬生をさらに縮めることはない、と判断したわけです。

今となってみては、彼女が出産したからといって 彼女の犬生が本来より短くなったかどうかはわかりません。しかし、彼女の犬生はたった3歳で終わってしまいました。もし、子犬たちが生まれていて、彼女と同じ疾患をもっていたら・・・ きっと、私と同じようにその子の飼い主さんも辛い思いをしただろうなぁ・・と思うと、自分の判断は間違ってなかったと思っています。

 

最近よく、「この子(=犬)の子供が見てみたい!」という声を聞きます。これは飼い主さんからすれば、とっても良い、正しい選択の様に感じます。でも、本当にその選択はワンちゃんにとって、また生まれてくる子犬たちにとって正しい選択なのでしょうか? 次世代の犬たちを作るということは、ブリーダーという人たちのみに責任があるわけではありません。ブリーダーという職業でない人も、『自分のワンちゃんを交配させた』という時点で、ブリーダーと同じ責任を負うということを自覚して下さい。それでも自分のワンちゃんの子供が見たい!という方、まだ迷っているけど興味のある方、是非、ブリーダーがどのような点に気をつけて交配したり、子犬たちを育てあげているのか、是非この記事を読んで下さいね。

 

 

今回は、元ブリーダー王子の乳母(笑)さんに色々聞いてみました。
ご本人曰く、「『ブリーダーとして』というよりは、イヌの繁殖に関わったからこそ考える、考えなければならないことをお話しできれば…」とのことでした。

 

Q:こんにちは。さて、早速ですが、 ブリーダーという仕事はどのようなことをしているのですか?

王子の乳母(以下”王子”):ブリーダーには大きく分けて2つのタイプがいます。1つは、ドッグショーに出すようなイヌを作出る“ショーブリ-ダーですね。それぞれの犬種にはスタンダード(犬種標準)という『その犬種の理想体型』と言ったら良いのでしょうか…がありまして、それを意識してブリーディングを行います。そして、もう1つが ペットブリーダーですね。これは文字通り、純粋に家族の一員として飼われることを願ってブリーディングを行います。ですからショードッグほどスタンダードを目指しているわけではありません。ただ、どちらのブリーダーであっても、本当にその犬種に惚れ込んで、常にイヌの『質』にこだわって向上を目指す。これがブリーダーの仕事ですね。

Q:なるほどねぇ~ 確かに、ショードッグとペットドッグって色々な意味で違いますよね(^^; ただ、どうでしょうか?どちらのブリーダーであっても、ブリーディング(交配)する際に気をつけることは同じですよね?

王子:そうですねぇ~ まず、その犬種のスタンダードに近い、もしくはパーフェクトなメスを探すことですね。これは姿パーフェクである!というだけでなく、性格や病気の有無、遺伝性疾患の有無のチェックが重要です。姿がいくらスタンダードに近くても性格に問題があってはいけません。また、遺伝性の疾患を見落として繁殖した場合、その問題をばらまいてしまう事になりかねません性格的に問題のあるイヌはどんな理由があるにせよ交配に使うべきではありませんブリーダーであるなしに関わらず、繁殖をしようとする人は、是非この点に関して慎重に考えて欲しいです。

Q:そうなんですよねぇ~ 本当に良く考えて欲しいですよね。それに関連して、最近よく、『ウチの子の子犬が見たいから交配させたい』という声を飼い主さんから聞きます。このことに関して何かお考えはありますか?

王子:私、個人としては反対です。というのも、ほとんどの飼い主さんは、「一頭の子犬」が欲しいと考えているんですね。多くの飼い主さんが、イヌは多胎の多胎の動物*であるということを忘れてしまっています。時には10頭近く生まれてくる場合もあります。そこをまず考えて欲しいのです。これが第一の理由。そして第二の理由は、先ほどもお話した遺伝性の疾患も含めて出産に関わる“リスク”を考えているのかどうかです。自分の子(=親になるワンちゃん)に遺伝性の疾患が現れていなくても、子犬たちに出たからどうするのか?仮死状態で生まれてきたらどうするか?そういったことも含めて真剣に考えなければ、イヌたちが不幸になるということです。そこまで考えなければ、交配はすべきではありません。

*一度の交配で多くの子を出産すると言う意味です。イヌの場合、1頭しかできなかった…ということは少ないですね。逆に、1、2頭しかお腹にいなかった場合は、難産になる場合が多いです

Q:イヌの交配は結構安易に考えられているのでは?!と思います。実際、考慮しなければいけないことが多くあります。また、お産も楽!子育ても親イヌが勝手にやってくれる!! と考えている飼い主さんが多いのでは?! どんなワンちゃんでも『お産は楽!』とは言えません。短頭種や小型犬はお産が大変になることが多いです。育児拒否する母イヌもいます。また多産だと、飼い主さんが手を貸してあげなければいけないことも多いです。この他にも飼い主さんが絶対にやらなければならないことがあります。それは『社会化』です。社会化に関してはどう考えていらっしゃいますか?

王子:優秀なブリーダーであれば、子犬が生涯幸せに暮らせるように、ある程度の人馴れや環境の変化に対する耐性を考えて社会化するものだと思います。私が実際にやっていたのは、生まれて直ぐに手で抱き上げる事。生後二週齢以内に爪を切り、その後も毎週切っていきます。後は、大きな音を絶やさないこと(アクション映画を一日中つけておく)。グルーミングを毎日行う事。生後一ヶ月齢になったら外に連れ出し、色々な人に抱っこしてもらったり、子供達に紹介したりします。子犬同士の遊びはとても重要なので、生後60日以上にならないと譲渡はしませんでした。

Q:交配をさせてから出産までに約2ヶ月。出産から新しい飼い主さんの元に旅立たせるまでの2ヶ月間。飼い主さんにはやることが沢山あります。特に社会化に関しては、『その子犬たちの将来を決める!!』と言って良いほど重要です。社会化についてご存知ですか?正しい社会化のやり方をご存知ですか?交配をさせるということは様々な知識が必要です。ブリーダーに任せれば良い、獣医師に任せれば良い、そういうことでは良い子犬を育てあげることはできません。ブリーダーも獣医師もポイント、ポイントでアドバイスはできるかもしれません。でも、毎日、毎日ワンちゃんと接し、子犬を育てあげるのは飼い主さんです。その責任を感じて下さい。

さて、今回の話題とはちょっと反れますが・・
最後に『良いブリーダーを見分けるコツ』を教えてもらえませんか?!

王子:難しいですが…(^^; なぜブリーダーをしているのか聞いてみるのが一番ではないでしょうか?! 良いブリーダーであれば、自分の行う繁殖に自信があるので何時間でも話してくれます。その犬種に対する情熱が伝わってくると思います。多くの犬種を扱っているのはどうかと思います・・ あとは、母イヌが健康でキレイな状態を保っているかもポイントですね。

Q:私が聞いたことのある、良いブリーダーを見分けるコツも同じようなことでしたね。あとは、子犬の兄弟や両親、親戚?!イヌを見せてくれるか、生活環境を見せてくれるか…ということもありましたね。他には、日本でも同じだと思いますが、イギリスでは『同腹(=一緒に生まれた兄弟・姉妹)のイヌを2匹一緒に飼いませんか?仲も良いし、育てやすいですよ』と勧めるブリーダーは良いブリーダーではない!と言われています。

自分のワンちゃんを交配させようと考えている方には、是非生まれてくる子犬の将来について考えて欲しいと思います。飼い主さんから見れば、ご自分のワンちゃんはカワイイしパーフェクトなワンちゃんだと思います。でも、ちょっと待って下さい。第三者から見た場合、なんらかの問題があるかもしれません。特に獣医師から見て健康上、性格上、なんらかの問題があると判断された場合は、絶対に交配させるべきではありません。
交配ができないからといって、その子がダメ犬というわけでは絶対にありませんよ。その子は飼い主さんご家族にとって最高のワンちゃんです。そのワンちゃんの“子供”を愛するのではなく、“その子”を目一杯愛して、幸せな犬生を送らせてあげて下さい。それが一番だと思いませんか?!

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